遺伝子・染色体異常 PR

【国試対策】医学総論の遺伝子・染色体異常はこれでOK!頻出の過去問を徹底解説

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さい
さい
こんにちは、SAI-LABOのさいです!
今回は、臨床検査医学総論の範囲から、遺伝子や染色体の異常によって引き起こされる疾患に関する過去問を解説していきます。
ラボくん
ラボくん
遺伝子の話、カタカナも多いし、疾患と結びつけて覚えるのが本当に苦手!
さい
さい
国試で問われるのは、各疾患の「原因となる特徴的な異常」です。
この記事で、染色体の「数の異常」と「遺伝子の異常」という大きな視点から、頻出の疾患を整理していきましょう。ポイントさえ押さえれば、確実に得点源になります!

染色体の「数」の異常

さい
さい
まずは、染色体の本数が正常(46本)と異なることで発症する疾患の問題です。どの番号の染色体に異常があるかが問われます。

【第67回 午後 問13】Down症候群で認められるのはどれか。

1.t(8;14)
2.t(9;22)
3.13トリソミー
4.21トリソミー
5.Xモノソミー

 

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正解:4

さい
さい
染色体異常の問題は、国試の鉄板です!
この問題は、選択肢を含めて、染色体の「数の異常」と「構造の異常」の代表的なものがてんこ盛りになっています。
一つひとつの選択肢が、それぞれ別の問題として出題されてもおかしくないくらい重要なので、この1問で一気にマスターしてしまいましょう!

染色体異常の2大分類

染色体異常は、大きく分けて「本数がおかしい(数の異常)」か、「形がおかしい(構造の異常)」の2種類があります。

  • 数の異常:正常は46本ですが、それより多かったり(トリソミーなど)、少なかったり(モノソミーなど)する状態です。
  • 構造の異常:本数は46本で正常ですが、染色体の一部が入れ替わったり(転座など)、失われたり(欠失など)する状態です。

各選択肢の解説

この問題の選択肢は、まさにこの2大分類の良いお手本です。一つずつ見ていきましょう。

4.21トリソミー → 正しい:Down症候群(ダウン症候群)は、21番染色体が3本存在することが原因で起こる、最も頻度の高い染色体数異常症です。核型は `47,XX,+21` または `47,XY,+21` と表記されます。

国試頻出!染色体異常と関連疾患 まとめ

数の異常
21トリソミー Down症候群
13トリソミー Patau症候群
Xモノソミー (45,X) Turner症候群
構造の異常(転座)
t(9;22) フィラデルフィア染色体 慢性骨髄性白血病 (CML)
t(8;14) MYC遺伝子再構成 Burkittリンパ腫

1.t(8;14) → 誤り:これは8番染色体と14番染色体の相互転座で、がん遺伝子であるMYCが活性化します。Burkittリンパ腫でみられる特徴的な染色体異常です。

2.t(9;22) → 誤り:これは9番染色体と22番染色体の相互転座で、フィラデルフィア染色体が形成されます。慢性骨髄性白血病(CML)の原因となる、国試最重要の染色体異常です。

3.13トリソミー → 誤り:これは13番染色体が3本存在する状態で、Patau(パトウ)症候群の原因です。

5.Xモノソミー → 誤り:これは性染色体がX染色体1本のみ(核型:45,X)である状態で、女性に発症するTurner(ターナー)症候群の原因です。

さい
さい
染色体異常と疾患名、カタカナばっかりで覚えるのが大変です。
ゴロ合わせで、国試で頻出の組み合わせを、一気に覚えてしまいましょう!
染色体異常ゴロ合わせ(無理やり感ありますが笑)

数の異常は、その数字と症状のイメージで覚えます。

「父さん(13)パターンとダウン(21)

  • 父さん(13)13トリソミー
  • パターンと → パタウ症候群
  • ダウン(21)ダウン症候群(21トリソミー)

構造の異常(転座)は、数字と関連疾患をリズムで覚えます。

「バー(Burkitt)やい(8,14)なや、
(CML)折って苦痛(9,22)だぜ」

※やいやな=難癖の掛け声

  • バーで → バーキットリンパ腫
  • やい(8,14)なや → t(8;14)
  • 折って → 髄性白血病(CML
  • 苦痛(9,22)だぜ → t(9;22)

【第68回 午後 問12】染色体検査が診断に有用なのはどれか。

1.血友病 A
2.サラセミア
3.Gaucher 病
4.Turner 症候群
5.フェニルケトン尿症

 

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正解:4

さい
さい
この問題は、遺伝性疾患の中から「染色体検査」で診断できるものを選ぶ、という非常に重要な問題です。
ポイントは、病気の原因が「遺伝子一つ」のレベルなのか、それとも「染色体まるごと一本」という大きなレベルなのかを区別することです。

単一遺伝子疾患 vs 染色体異常症

遺伝性疾患は、原因となる遺伝情報の異常の大きさによって、大きく2つに分類できます。

遺伝性疾患の2大分類

単一遺伝子疾患

🧬

特定の遺伝子1つの変異が原因。
通常の染色体検査(分染法)では検出できない
診断には遺伝子検査が必要。

染色体異常症

🔬

   染色体レベルの大きな変化(数の異常や大きな構造異常)が原因。
染色体検査(分染法)で検出できる。

各選択肢の解説

この問題は「染色体検査が診断に有用なのはどれか」、つまり「染色体異常症はどれか」と問うています。上の分類を元に見ていきましょう。

4.Turner 症候群 → 正しい:ターナー症候群は、性染色体がX染色体1本のみ(45,X)となる数の異常です。これは染色体検査で明確に診断できるため、正解です。

その他の選択肢 → 誤り:これらはすべて、特定の遺伝子1つに異常がある単一遺伝子疾患です。診断には、それぞれの原因遺伝子を調べる遺伝子検査が必要となります。

疾患名 分類 原因遺伝子
1.血友病 A 単一遺伝子疾患
(X連鎖劣性)
第VIII因子遺伝子
2.サラセミア 単一遺伝子疾患
(常染色体劣性)
グロビン遺伝子
3.Gaucher(ゴーシェ) 病 単一遺伝子疾患
(常染色体劣性)
グルコセレブロシダーゼ遺伝子
5.フェニルケトン尿症 単一遺伝子疾患
(常染色体劣性)
フェニルアラニン水酸化酵素遺伝子
α 知識:検査法の違い

イメージとしては、こんな感じです。

  • 染色体検査:46冊ある百科事典の「冊数が合っているか」「ページの破れや入れ替わりがないか」を調べる。
  • 遺伝子検査:百科事典の中の、特定の記事にある「一文字の誤字・脱字」を見つけ出す。

血友病やサラセミアは「一文字の誤字」が原因なので、冊数を数える染色体検査では見つけられない、ということですね。 

遺伝子の異常と臨床応用

さい
さい
次に、染色体よりももっとミクロな「遺伝子」レベルの異常が原因となる疾患や、その遺伝子情報を治療に役立てる検査についての問題です。

【第68回 午後 問15】分子標的薬投与の決定に ERBB2(HER2)増幅の検索を行うのはどれか。

1.乳 癌
2.卵巣癌
3.子宮頸癌
4.子宮体癌
5.前立腺癌

 

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正解:1

さい
さい
分子標的薬!これは現代のがん治療、そしてコンパニオン診断の核心に迫るテーマですね。
この問題は、「どの癌で、どの遺伝子を調べて、どの薬を使うか」という、国試で頻出のペアリング問題の典型です。

分子標的薬とHER2タンパク

がん細胞の中には、特定の遺伝子(がん遺伝子)が異常に増える(遺伝子増幅)ことで、細胞の表面に特定のタンパク質(アンテナ)を過剰に発現させているタイプがあります。このアンテナが、細胞に「増殖しろ!」という命令を出し続けることで、がんが増大します。

HER2(ハーツー)は、まさにその代表的なアンテナ(受容体型チロシンキナーゼ)です。

HER2陽性がんの仕組み

細胞内でHER2遺伝子が増幅

細胞表面にHER2タンパク(アンテナ)が異常に増える

📡📡📡📡📡

増殖シグナルが暴走し、がん細胞が無限に増殖!

分子標的薬(抗HER2薬:トラスツズマブなど)は、この増えすぎたHER2アンテナだけを狙い撃ちして、増殖シグナルをブロックする薬です。

各選択肢の解説

この問題は、「HER2遺伝子増幅の検索を行うのはどのがんか?」と問うています。つまり、「抗HER2薬という分子標的薬が、どのがんの治療で重要か?」という知識を問う問題です。

1.乳 癌 → 正しい:乳がんの約15〜20%は、HER2タンパクが過剰に発現している「HER2陽性乳がん」であることが知られています。このタイプの乳がんに対しては、抗HER2薬が非常に高い治療効果を示すため、治療方針を決定する上でHER2の検査(コンパニオン診断)が必須となります。

その他の選択肢 → 誤り:卵巣癌や子宮頸癌、子宮体癌、前立腺癌でも様々な遺伝子異常が見られますが、治療方針決定のためにHER2遺伝子増幅を必須で検索する、というケースは一般的ではありません。

さい
さい
国試対策としては、「HER2といえば、まず乳がん(と胃がん)」と覚えておけば十分です。
+α 知識:HER2の検査法

HER2の状態を調べる検査には、主に2つの方法があります。これも国試で問われる可能性があります。

  • IHC法(免疫組織化学法):抗体を使って、がん細胞の表面にあるHER2タンパクの量を調べる。(タンパク質レベル)
  • FISH法 (in situ hybridization法):蛍光プローブを使って、がん細胞の核の中にあるHER2遺伝子のコピー数を調べる。(遺伝子レベル)

IHC法で判定が微妙な場合に、FISH法で最終確認を行う、という流れで検査が進められます。

【第69回 午前 問12】BRCA1/2 の病的変異が検出されるのはどれか。

1.Lynch 症候群
2.家族性大腸腺腫症
3.Li-Fraumeni 症候群
4.von Hippel-Lindau 病
5.遺伝性乳がん卵巣がん症候群

 

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正解:5

さい
さい
BRCA(ブラッカ)遺伝子!これも国試頻出の重要な遺伝子ですね。
この問題は、特定の遺伝子変異と、それが原因となる疾患(遺伝性腫瘍症候群)の正しいペアリングを知っているかを問う、ストレートな知識問題です。

BRCA1/2遺伝子とは?

BRCA1とBRCA2は、傷ついたDNAを修復する働きを持つ、非常に重要ながん抑制遺伝子(ブレーキ役)です。普段は、細胞ががん化しないように見守ってくれています。

しかし、この遺伝子に生まれつき病的な変異があると、DNAの修復能力が低下し、特に乳がん卵巣がんを発症するリスクが著しく高まることが知られています。

BRCA1/2と遺伝性乳がん卵巣がん症候群

生まれつき
BRCA1/2遺伝子に変異がある

DNAの修復能力が低下(ブレーキが効きにくい)

乳がん・卵巣がんなどを
発症するリスクが著しく高まる
遺伝性乳がん卵巣がん症候群 (HBOC)

各選択肢の解説

この問題は「BRCA1/2の病的変異が検出されるのはどれか」を聞いています。

5.遺伝性乳がん卵巣がん症候群 → 正しい:上記の通り、遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC: Hereditary Breast and Ovarian Cancer Syndrome)は、BRCA1またはBRCA2遺伝子の病的変異が原因です。

その他の選択肢 → 誤り:これらは、別の原因遺伝子によって引き起こされる、それぞれ異なる遺伝性腫瘍症候群です。国試ではこれらのペアリングも問われるため、セットで覚えておきましょう。

疾患名 原因遺伝子(がん抑制遺伝子)
1.Lynch症候群 MSH2, MLH1など(ミスマッチ修復遺伝子)
2.家族性大腸腺腫症 (FAP) APC
3.Li-Fraumeni症候群 TP53 (p53)
4.von Hippel-Lindau病 VHL
+α 知識:アンジェリーナ・ジョリー効果

米国の女優アンジェリーナ・ジョリーさんが、HBOCの原因となるBRCA1遺伝子の変異を持つことを公表し、がんの発症リスクを減らすために予防的に両乳房を切除したことは、世界的に大きな話題となりました。

これにより、遺伝カウンセリングや遺伝子検査への関心が高まり、遺伝性疾患に対する社会的な認知度が向上しました。この出来事は「アンジェリーナ効果」とも呼ばれています。

【第71回 午後 問15】遺伝性乳癌卵巣癌症候群〈HBOC〉の原因遺伝子はどれか。

1.APC
2.BRCA1
3.MEN1
4.MLH1
5.VHL

 

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正解:2

さい
さい
また来ましたね、遺伝性腫瘍と原因遺伝子のペアリング問題!
前回(第69回)は遺伝子名から疾患名を聞く問題でしたが、今回は疾患名から遺伝子名を問う、逆パターンの問題です。
問われている知識は同じですが、どちらから聞かれても答えられるようにしておくことが重要です。

遺伝性腫瘍症候群と原因遺伝子

遺伝性腫瘍症候群は、特定のがん抑制遺伝子(ブレーキ役)に生まれつき変異があることで、生涯にわたって特定のがんを発症するリスクが高くなる疾患群です。国試では、これらの「疾患名」と「原因遺伝子」の正しい組み合わせを覚えているかが問われます。

各選択肢の解説

この問題は「遺伝性乳癌卵巣癌症候群〈HBOC〉の原因遺伝子はどれか」と問うています。

2.BRCA1 → 正しい:遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)の原因遺伝子は、DNA修復に関わるBRCA1およびBRCA2です。

その他の選択肢 → 誤り:これらは、別の遺伝性腫瘍症候群の原因遺伝子です。前回の問題と合わせて、この機会に全ての組み合わせを完璧にマスターしてしまいましょう!

国試最重要!遺伝性腫瘍と原因遺伝子

疾患名 原因遺伝子 関連する主な腫瘍
遺伝性乳がん卵巣がん症候群 (HBOC) BRCA1, BRCA2 乳がん, 卵巣がん
家族性大腸腺腫症 (FAP) APC 大腸ポリープ, 大腸がん
リンチ症候群 (HNPCC) MLH1, MSH2 など 大腸がん, 子宮体がん
多発性内分泌腫瘍症1型 MEN1 下垂体, 副甲状腺などの腫瘍
von Hippel-Lindau病 VHL 腎細胞がん, 褐色細胞腫

この表を見れば、各選択肢がどの疾患に対応するかが一目瞭然です👍

まとめ:遺伝子・染色体異常は“ペアリング”で攻略!

お疲れ様でした!今回は、臨床検査医学総論の中から「遺伝子・染色体異常」に関する過去問を解説しました。多くの専門用語が出てきましたが、国試で問われるのは、疾患と原因となる異常の「ペア」であることが分かりますね。

【結論】遺伝子・染色体異常 3つの鉄則

鉄則1:染色体異常は「数の異常」と「構造の異常」を区別する

ダウン症=21トリソミーCML=t(9;22)

病気の原因が、染色体の本数そのものの異常(数の異常)なのか、染色体の一部の入れ替わりなど(構造の異常)なのかを明確に区別しましょう。特に、Down症候群(21トリソミー)慢性骨髄性白血病(CML)のフィラデルフィア染色体 t(9;22)は、それぞれの代表例として絶対に覚える必要があります。

鉄則2:「単一遺伝子疾患」と「染色体異常症」の違いを理解する

染色体検査でわかるのはTurner症候群遺伝子検査が必要なのは血友病

疾患の原因が、染色体まるごと一本という大きなレベル(Turner症候群など)なのか、遺伝子一文字レベルの小さな異常(血友病など)なのかを区別することが重要です。この違いによって、診断に用いるべき検査法(染色体検査か、遺伝子検査か)が決まります。

鉄則3:遺伝性腫瘍と原因遺伝子のペアは完璧に

遺伝性乳がん卵巣がんといえばBRCA1/2

国試では、特定の遺伝性腫瘍症候群と、その原因となる遺伝子の組み合わせが繰り返し問われます。特に、遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)の原因がBRCA1/2であることは、絶対に覚えておきたい最重要のペアリングです。

さい
さい
遺伝子・染色体の分野は、最初はとっつきにくいかもしれませんが、一度覚えてしまえば安定した得点源になります。
この記事の表やゴロ合わせを何度も見返して、苦手意識を克服してくださいね!