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臨床検査技師向け:eGFR(Cre)とeGFR(Cys)の要点解説

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【臨床検査技師 国家試験対策】EGFR(クレアチニン・シスタチンC)の要点解説

臨床検査技師の国家試験で頻出のテーマである「eGFR(推定糸球体濾過量)」について、特に重要なクレアチニン(CRe)とシスタチンC(Cys)を用いた計算方法と、その臨床的意義を分かりやすく解説します。


1. EGFRとは?

EGFR(estimated Glomerular Filtration Rate)は、日本語で「推定糸球体濾過量」と訳されます。これは、腎臓の最も重要な働きである「老廃物を血液からろ過する能力(糸球体濾過量:GFR)」を、採血結果などから推定する値です。

【重要ポイント】

  • 腎機能の指標: EGFRは現在の腎臓の働き具合を示す最も重要な指標です。
  • CKDの診断と重症度分類: 慢性腎臓病(CKD)の診断や、その進行度をステージ分類するために不可欠です。EGFRの値が低いほど、腎機能が低下していることを意味します。
  • 自覚症状がない段階での発見: 腎機能はかなり低下しないと自覚症状が現れません。そのため、健康診断などで行われる血液検査からeGFRを算出することが、CKDの早期発見に繋がります。

2. EGFRの計算に用いるマーカー:CRE(クレアチニン)とCys(シスタチンC)

eGFRを計算するためには、血液中の特定のマーカー濃度を測定します。国家試験では、特に「血清クレアチニン(CRe)」と「血清シスタチンC(Cys)」の2つが重要です。

血清クレアチニン(CRe)を用いたeGFR

クレアチニンは、筋肉運動のエネルギー源であるクレアチンリン酸の代謝産物です。

  • 長所: 広く普及しており、安価に測定できます。
  • 短所: 筋肉量の影響を受けます
    • 筋肉質の人: 実態よりも腎機能が低く(悪く)評価される傾向があります。
    • 痩せ型や高齢者、長期臥床の患者: 筋肉量が少ないため、実態よりも腎機能が高く(良く)評価される傾向があり、腎機能低下を見逃す可能性があります。

【必須暗記!eGFRcreatの計算式(日本人向け)】

(Cr:血清クレアチニン値 mg/dL)

男性: eGFR = 194 × Cr⁻¹·⁰⁹⁴ × 年齢⁻⁰·²⁸⁷

女性: eGFR = 194 × Cr⁻¹·⁰⁹⁴ × 年齢⁻⁰·²⁸⁷ × 0.739

 血清シスタチンC(Cys)を用いたeGFR(eGFRcys)

シスタチンCは、全身のほぼすべての有核細胞から一定の速度で産生されるタンパク質です。

  • 長所: 筋肉量や食事の影響を受けにくいため、クレアチニンよりも正確な腎機能評価が期待できます。特に、高齢者や痩せ型の患者など、クレアチニン値では評価が難しい場合に有用です。
  • 短所: 測定コストがクレアチニンに対してやや高価です。また、甲状腺機能異常やステロイド剤の使用などで値が影響を受ける場合があります。

【必須暗記!eGFRcysの計算式(日本人向け)】

(Cys-C:血清シスタチンC値 mg/L)

男性: eGFRcys = (104 × Cys-C⁻¹·⁰¹⁹ × 0.996^年齢) – 8

女性: eGFRcys = (104 × Cys-C⁻¹·⁰¹⁹ × 0.996^年齢 × 0.929) – 8

3. 国家試験に向けた要点のまとめ

項目 eGFRcreat (クレアチニン) eGFRcys (シスタチンC)
特徴 筋肉運動の代謝産物 全身の有核細胞から産生
筋肉量の影響 受ける 受けにくい
有用なケース 一般的なスクリーニング 高齢者、痩せ型、筋肉量の変化が大きい患者
計算式の因子 性別、年齢、血清クレアチニン値 性別、年齢、血清シスタチンC値
その他 腎機能が50%以下にならないと反映しにくいことがある。 腎機能低下を早期に検出できる可能性がある。

【CKDの重症度分類】

eGFRの値によって、CKDの重症度はG1~G5のステージに分類されます。この分類は、原因(C)と尿蛋白(アルブミン尿、A)と合わせて総合的に評価されます(CGA分類)。

  • G1: 90以上(正常または高値)
  • G2: 60~89(正常または軽度低下)
  • G3a: 45~59(軽度~中等度低下)
  • G3b: 30~44(中等度~高度低下)
  • G4: 15~29(高度低下)
  • G5: 15未満(末期腎不全)

【結論】

臨床検査技師として、eGFRの算出方法とその背景にある各マーカーの特性を理解することは極めて重要です。
特に国家試験では、クレアチニンとシスタチンCの違い(特に筋肉量の影響)と、それぞれの計算式で用いられる因子は頻出の知識となります。両者の長所・短所を理解し、症例に応じた適切な評価方法を判断できる能力が求められます。