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【臨床検査技師国家試験】第70回AM臨床血液学【解説】

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国家試験臨床血液学AM問59~67です。

過去問は厚労省ホームページより引用しております。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics_150873_139_140.html

国家試験の過去問解説のまとめページです

臨床検査技師国家試験解説集 

第70回臨床血液学AM59~67

59 播種性血管内凝固〈DIC〉で上昇するのはどれか。

  1. PIVKA-Ⅱ
  2. D-ダイマー
  3. プロテインC
  4. アンチトロンビン
  5. プラスミンインヒビター

解説:播種性血管内凝固(DIC)の検査値と病態をまとめました。

★検査値と所見

  • 高値 ⇒ FDP、D-ダイマー、PT
  • 低値 ⇒ PLT(血小板)、フィブリノゲン
  • 所見 ⇒ 出血症状(紫斑、口腔・鼻出血、血尿など)

★病態

DICでは基礎疾患の存在下、血管内において播種性(全身に広がる性質)に凝固活性化が生じる。
それにより微小血栓が多発するため、微小循環障害により臓器障害が起きる。
そして消費性に凝固因子・血小板が低下するため、出血症状が出現する。
結果、凝固活性化とともに線溶活性化が生じ、フィブリン分解産物であるD-ダイマーが上昇する

DICは頻出なので、意義と共に検査値の動きも把握しておきましょう。

答え:2

60 末梢血の好中球数が増加するのはどれか。

  1. アルコール中毒
  2. 伝染性単核球症
  3. アレルギー性鼻炎
  4. 急性骨髄性白血病
  5. 副腎皮質ステロイド薬投与

解説:いじわるな問題だと思います。基本的に好中球が増加する要因は以下のものがあります。

  • 細菌感染症
  • 感染症以外の炎症
  • 悪性腫瘍
  • 慢性骨髄増殖性疾患(慢性骨髄性白血症、真性赤血球増加症、本態性血小板血症、骨髄線維症)
  • 薬物投与後(副腎皮質ステロイド、アドレナリンなど)

上記より、急性骨髄性白血病と副腎皮質ステロイド薬投与の二つが鑑別にあがります。
好中球の中の成熟過程の話になってきます。
急性骨髄性白血病の場合は、成熟好中球の数はへり、幼弱な芽球系細胞が増加します。白血球数は増えているが、成熟好中球としてみると減少しているということです。
したがって、ステロイド薬投与が正答となります。

他の選択肢を見てみると

  • アルコール中毒 ⇒ 好中球の減少
  • 伝染性単核球症 ⇒ リンパ球(異型リンパ含む)の増加
  • アレルギー性鼻炎 ⇒ 好酸球の増加
  • 急性骨髄性白血病 ⇒ 幼弱球の増加(成熟好中球は減少、白血球数は増加)

答え:5

61 アミノ基転移酵素活性を有するのはどれか。

  1. トロンビン
  2. プラスミン
  3. 活性化第Ⅹ因子
  4. 活性化第XIII因子
  5. 活性化プロテインC

解説:選択肢の各酵素と因子の役割と特徴を理解していないといけない難問です。凝固線溶系はとにかく複雑で難しいので、色々な問題を解き、慣れていきましょう。

★凝固反応に関わる酵素の役割

  • トロンビン
    ⇒血液を固める血液凝固物質である「フィブリン」を産生する
  • プラスミン
    ⇒フィブリンが作った網目状の膜を溶かす
  • 活性化第Ⅹ因子
    ⇒肝臓で合成されるビタミンK依存性の血液凝固因子の1つ。
    第Ⅹ因子はセリンプロテアーゼ前駆体で、活性化第Ⅸ因子・活性化第Ⅷ因子複合体(Ⅸa-Ⅷa複合体)によって活性化される経路(内因系)と、
    活性化第Ⅶ因子・組織因子複合体(Ⅶa-TF複合体)によって活性化される経路(外因系)がある
  • 活性化第XIII因子
    ⇒活性化第XIII因子はトランスグルタミナーゼ活性により、その機能を果たす。
    ペプチド結合-グルタミル残基の γ-カルボキシアミド基とペプチド結合-リジン残基の ε-アミノ基との間のアシル転位反応(アミノ基転移反応)が触媒され、ε-(γ-グルタミル)リジン結合が形成され、フィブリン同士が架橋される
  • 活性化プロテインC
    ⇒活性化プロテインCは、プロテインSと結合して第Va因子および第VIIIa因子を分解し、それによって凝固を抑制する

答え:4

62 赤血球に関する記載で正しいのはどれか。

  1. エリスロポエチンは肝臓で産生される。
  2. 前赤芽球は正染性赤芽球よりも大きい。
  3. 健常者の赤血球寿命は約80日である。
  4. 網赤血球は成熟赤血球よりも小さい。
  5. 老化につれて赤血球変形能が高まる。

解説:赤血球の成熟過程と、特徴(大きさ、寿命)の問題です。選択肢を正しく直し、まとめ直します。

  • エリスロポエチンは腎臓で産生される。
  • 前赤芽球は正染性赤芽球よりも大きい。
    ⇒大きさは以下の通り
    (前赤芽球(20~25μm)>好塩基性赤芽球(16~20μm)>多染性赤芽球(12~18μm)>正染性赤芽球(8~10μm)>成熟赤血球(6~9μm))
  • 健常者の赤血球寿命は約120日である。
  • 網赤血球(レチクロ)は成熟赤血球よりも“やや”大きい。
    ⇒赤血球の中で最も若いもので、赤芽球が成熟し脱核した1~2日以内の赤血球
  • 老化につれて赤血球変形能は低下する。

赤芽球は幼弱なほど大きい、寿命は4か月(120日)、腎で作られるエリスロポエチンは造血作用を持つというポイントを押さえていれば大丈夫です。

答え:2

63 骨髄塗抹標本で正しいのはどれか。

  1. 正常赤芽球はPAS染色陽性である。
  2. 健常成人骨髄像では鉄芽球が認められない。
  3. 前骨髄球はペルオキシダーゼ染色陰性である。
  4. 健常成人骨髄像ではM/E比は10以上である。
  5. 単球のエステラーゼ反応はフッ化ナトリウムによって阻害される。

解説:選択肢を正しく直してまとめます。

  • 正常赤芽球はPAS染色陰性である。
    ⇒赤白血病や、MDSなどで出現する腫瘍性赤芽球は陽性になることもある
  • 健常成人骨髄像では鉄芽球は認められる。
    ⇒15%を超えるかの鑑別が必要
  • 前骨髄球はペルオキシダーゼ染色陰性である。
    ⇒ペルオキシダーゼ染色は顆粒系、リンパ系の鑑別に有効
  • 健常成人骨髄像ではM/E比は10以上である。
    顆粒系(M)/赤芽球系(E)の基準値は3:1とされる。
  • 単球のエステラーゼ反応はフッ化ナトリウムによって阻害される。

※エステラーゼは、

  • 短鎖のエステルを分解する非特異的エステラーゼ
    (アセテートやブチレート)
  • 長鎖のエステルを分解する特異的エステラーゼ
    (ナフトールAS-Dクロロアセテート)

に分けられる。
単球系細胞では非特異的エステラーゼが陽性となり、フッ化ナトリウムにより阻害される。

答え:5

64 自動血球計数器法で赤血球ヒストグラム(別冊No. 11)を別に示す。赤血球125万/µL、Hb 7.5g/dL、Ht 15%で矢印の所見が認められた。可能性があるのはどれか。

  1. 高血糖
  2. 巨大血小板
  3. 破砕赤血球
  4. 寒冷凝集素症
  5. 高ビリルビン血症

解説:写真のヒストグラムを見ると、左側に大きいピークがあり、右側(矢印)部分に小さいピークがある。赤血球ヒストグラムは2峰性になっており、矢印はfLが大きい箇所にあり、「赤血球凝集」を反映していると考える。
寒冷凝集素症などで寒冷凝集素価が高いと赤血球凝集が起きるので、写真のようなヒストグラムを示す。

また、裏付けとして「赤血球125万/µL、Hb 7.5g/dL、Ht 15%」という赤血球とヘマトの異常低値も、赤血球凝集を示唆していると考えられる。Hbに関しては影響はない。

補足として、選択肢の中で赤血球数(偽低値疑い)的には鑑別に上がる破砕赤血球は、
赤血球ヒストグラムの左側に出現する特徴がある。

答え:4

65 シリンジで採血を行い、止血処置の間にしばらく立てて静置した。その状況の写真(別冊No. 12)を別に示す。そのままシリンジを転倒混和せず、複数の血算用の試験管に分注した。最後の試験管に比べて最初の試験管で測定値が大きくなる可能性の最も高いのは
どれか。

  1. 単球数
  2. 血小板数
  3. 好中球数
  4. 赤血球数
  5. リンパ球数

解説:「全血を放置するとどうなるか」を考えると、「血球と血漿に分離する」という事が容易に予想ができる。
当然、重力によって血球が下に沈殿し、上の部分は血漿が分離されてくるはず。
その状態でシリンジから採血管に分注すると、濃度勾配が起きて血球成分が明らかに多くなった血液が分注されるはずです。
「赤血球」が測定値で「明らか」に大きくなるはずです。

血液ガス測定で、慣れてない人が測定をする時によくある現象です笑

答え:4

66 血清に含まれないのはどれか。

  1. アルブミン
  2. γ-グロブリン
  3. ハプトグロビン
  4. フィブリノゲン
  5. トランスフェリン

解説:日頃、検査をしている人は選択肢を見ると自ずと答えが出てくるような問題です。
なぜなら、血漿ではなく、「血清検体」で、アルブミン、γ-グロブリン(IgG、A、Mなど)、ハプトグロビン、トランスフェリンを検査することを知っているからです。
しかし、ここは国家試験の問題なので、学術的に説明をすると以下の通りになります。

血漿には凝固因子が含まれますが、血液凝固反応が完結した後に血液検体を遠心した上清である血清には「フィブノゲン」が消費されて残っていません。
フィブノゲンなどの凝固検査の検体には、
血清ではなく血漿検体(3.2%クエン酸ナトリウム)」を用います。

答え:4

67 造血器腫瘍患者の骨髄血を用いた染色体核型(G分染法)の結果(別冊No. 13)を別に示す。異常が認められた染色体を矢印で示す。想定される遺伝子異常はどれか。

  1. BCR-ABL1
  2. CBFB-MYH11
  3. ETV6-RUNX1
  4. PML-RARA
  5. RUNX1-RUNX1T1

解説:過去に既出の内容です。しかし、覚える内容が難しく、染色体異常から遺伝子を結びつける必要があります。下表を参考に考えます。

表右側に記載しているCBFB-MYH11融合遺伝子は、
染色体逆位 inv(16)(p13q22)によって形成される融合遺伝子です。
inv(16)(p13q22)はFAB分類におけるM4Eoに多く認めらます。

答え:2

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