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尿検査の「なぜ?」がわかる|性状・定性・沈渣の体系的学習

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【一般検査】尿検査の全て |尿の性状(尿量・色調・混濁・pH・比重)を解説

さい
さい
こんにちは。「さい」です。臨床検査技師の基本中の基本、「尿検査」。国試でも臨床でも非常に重要ですが、覚えることが多くて大変ですよね。このシリーズでは、そんな尿検査の全てを、ゼロから体系的に解説していきます!

この3部作(またはそれ以上)の記事を読み終える頃には、あなたは尿検査のプロフェッショナルになっているはずです。

まずは第1部。すべての基本となる「尿の性状検査」について、その「なぜ?」から深掘りしていきましょう。

1. 尿量 〜 体からの健康だより 〜

【基本】健康な成人の1日の尿量は、1,000〜1,500mL程度です。これは、体内の水分バランスや腎臓の働きを反映する、重要な指標です。

  • 多尿(2,500mL/日以上):尿がたくさん出過ぎている状態。尿崩症糖尿病を疑います。
  • 乏尿(400mL/日未満):尿が少なすぎる状態。脱水や腎不全などが原因です。
  • 無尿(100mL/日未満):尿がほとんど作られていない危険な状態です。

2. 尿の色調 〜 見た目で分かる異常のサイン 〜

尿の色は、様々な病態を教えてくれる視覚的な情報です。正常な尿は、ウロクロムという色素によって淡黄色〜麦わら色をしています。

色調 主な原因物質 考えられる疾患・状態
赤色〜鮮紅色 ヘモグロビン, ミオグロビン 血尿(尿路結石, 腎炎, 膀胱癌など), 溶血性貧血, 横紋筋融解症
褐色〜暗赤色 メトヘモグロビン 酸性尿での古い血尿
黄褐色〜褐色 ビリルビン (抱合型) 閉塞性黄疸, 肝細胞性黄疸(振ると黄色い泡が立つ)
黒色 メラニン, ホモゲンチジン酸 悪性黒色腫, アルカプトン尿症(放置で黒変)
乳白色 膿, 脂肪, リン酸塩 膿尿(腎盂腎炎など), 乳び尿, リン酸塩尿

3. 尿の混濁 〜 その濁りの正体は? 〜

新鮮な尿が濁っている場合、何が原因かを突き止める必要があります。以下の鑑別手順は国試頻出です!

  1. 加温する → 透明になれば「尿酸塩」
  2. 2%酢酸を加える → 透明になれば「リン酸塩」「炭酸塩」(炭酸塩は気泡も発生)
  3. 10% HClを加える → 透明になれば「シュウ酸カルシウム」
  4. アルコール・エーテル混液を加える → 透明になれば「脂肪」
  5. それでも濁りが残る → 「細菌」「膿」などを疑う。

4. 尿pH 〜 体の酸性・アルカリ性のバランスを見る 〜

【基本】健常人の尿pHは弱酸性(pH 6.0くらい)ですが、食事や病態によって変動します。

尿が酸性に傾く場合

肉などの動物性食品の摂取、激しい運動、糖尿病ケトアシドーシス、飢餓など

尿がアルカリ性に傾く場合

野菜などの植物性食品の摂取、尿路感染症(ウレアーゼ産生菌)、放置による細菌増殖など

【国試ポイント】試験紙法では、ブロモチモールブルー(BTB)メチルレッドという2つの指示薬を使い、広い範囲のpHを測定しています。

5. 尿比重・浸透圧 〜 尿の「濃さ」と腎臓の能力を見る 〜

尿比重と浸透圧は、尿がどれだけ濃いか、つまり腎臓の「尿濃縮力」が正常に働いているかを示す重要な指標です。

  • 尿比重:水の重さを1.000とした時の、尿の重さの比。健常成人は1.003〜1.030の間で変動します。
  • 尿浸透圧:尿中に溶けている粒子の総数。比重よりも正確な濃縮力の指標です。健常成人は50〜1,300mOsm/kg・H2Oの間で変動します。
比重が異常になる主な病態
  • 高比重尿:脱水、糖尿病(尿糖の影響)、ネフローゼ症候群(尿蛋白の影響)など。
  • 低比重尿(低張尿):尿崩症(腎臓が水を再吸収できない)、多量の水分摂取など。
  • 等張尿(1.010に固定):慢性腎不全など、腎臓の濃縮・希釈能力が失われた状態(最重篤)。

【一般検査】尿検査の全て|尿定性検査(蛋白・糖・潜血など)を原理から解説

さい
さい
前項では尿の性状について解説しました。本項では、試験紙の色の変化から病態を読み解く「尿定性検査」を解説します。

6. 尿蛋白 〜 腎臓からのSOSサイン 〜

【基本】健康な人では、尿中に蛋白はごく微量(~100mg/日)しか排泄されません。尿蛋白陽性は、腎疾患を疑う最も重要な所見の一つです。

6-1. 測定原理

① 試験紙法(蛋白誤差指示薬法)

pH指示薬(TBPBなど)が、蛋白(主にアルブミン)の存在下で、pHが一定でも色が変化する現象を利用します。

② スルホサリチル酸法

尿にスルホサリチル酸を加え、生じた濁り(混濁)の程度で蛋白を測定します。試験紙法より感度は低いですが、アルブミン以外の蛋白(Bence Jones蛋白など)も検出できます。

【国試ポイント】
試験紙法はアルブミンに特異性が高いため、Bence Jones蛋白(多発性骨髄腫)のような特殊な蛋白は検出されにくいです。この違いは頻出です!

6-2. Bence Jones蛋白(BJP)

【これは何?】多発性骨髄腫で産生される、免疫グロブリンのL鎖(軽鎖)です。

【なぜ重要?】BJPは腎毒性を持ち、腎障害を引き起こします。また、その検出には特殊な性質を利用します。

  • 加熱試験:50〜60℃で凝固(白濁)し、100℃に加熱すると再溶解するという特徴的な熱凝固性を示します。

7. 尿糖 〜 糖尿病を疑う第一歩 〜

【基本】通常、尿中に糖は検出されません。尿糖陽性は、まず糖尿病を疑うきっかけとなります。

7-1. 測定原理

  • 試験紙法(グルコースオキシダーゼ法):
    グルコースに特異的な酵素反応を利用します。グルコースオキシダーゼ(GOD)とペルオキシダーゼ(POD)の2段階の反応で、最終的に色素を酸化させて呈色させます。グルコース以外の糖(果糖、ガラクトースなど)とは反応しません。
  • 還元法(ベネジクト法):
    糖の還元性を利用する方法。グルコースだけでなく、他の還元糖(果糖、麦芽糖など)や、アスコルビン酸などの還元物質でも陽性になります。

【国試ポイント】試験紙法で偽陰性となる主な原因は、強力な還元物質であるアスコルビン酸(ビタミンC)の存在です。

8. 尿ケトン体 〜 飢餓と糖尿病の危険信号 〜

【これは何?】脂肪がエネルギーとして分解される際に肝臓で産生される、アセト酢酸、アセトン、β-ヒドロキシ酪酸の総称です。
(臨床化学の分野でも、ケトン体を選ばせる問題として出ることもあります)

【なぜ出る?】糖がエネルギーとして利用できない状態(糖尿病ケトアシドーシス、飢餓、嘔吐など)で陽性になります。

【国試ポイント】
試験紙法(ニトロプルシドナトリウムを用いる)は、主にアセト酢酸と反応します。最も量の多いβ-ヒドロキシ酪酸とは反応しないことを覚えておきましょう。

9. 尿ビリルビンとウロビリノゲン 〜 黄疸を鑑別する鍵 〜

この2項目は、黄疸の原因がどこにあるのか(肝前性・肝性・肝後性)を鑑別するための、非常に重要な情報です。

黄疸の分類 尿中ビリルビン 尿中ウロビリノゲン 代表疾患
肝前性黄疸 陰性 (-) 増加 (++) 溶血性貧血
肝性黄疸 陽性 (+) 増加 (+) 急性肝炎, 肝硬変
肝後性黄疸 陽性 (++) 陰性〜減少 (-) 胆道閉塞, 胆管癌
さい
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【なぜ?】水に溶けない間接ビリルビンは尿中に出られません。だから、溶血で間接ビリルビンが増える肝前性黄疸では、尿中ビリルビンは陰性なんです。この原理が分かれば、この表は丸暗記不要です!

【一般検査】尿検査の全て|尿沈渣検査(赤血球・白血球・円柱・結晶)を解説

さい
さい
前項までで、尿の見た目(性状)と化学的な性質(定性)から病態を読み解く方法を学びました。本項では、尿を遠心して得られる沈渣を、顕微鏡で直接観察する「尿沈渣検査」に焦点を当て、解説していきます。

尿沈渣は、腎臓や尿路からの「直接的なメッセージ」が詰まった情報の山です。細胞、円柱、結晶…一つひとつの成分が、何を意味しているのか。鑑別する知識、技術を、一緒にマスターしていきましょう。

10. 尿沈渣検査の基本 〜 顕微鏡の世界への入り口 〜

10-1. 標本の作製法

【国試ポイント】
新鮮な中間尿10mLとり、500G(1,500rpm)5分間遠心。上清を捨て、沈渣をよく混和し、一定量をスライドガラスに滴下して観察します。この「10mL, 500G, 5分」という数字は、基準化のための重要なルールです。

10-2. 染色法

  • Sternheimer染色(ステルンハイマー):最も一般的な染色法。核や細胞質を染め分け、細胞の鑑別を容易にします。
  • SudanⅢ染色:脂肪をオレンジ色に染め出し、脂肪円柱卵円形脂肪体の同定に用います。

11. 尿沈渣の登場人物たち①【血球成分】

11-1. 赤血球

健常人でも尿中にわずかに見られます(1視野に1〜5個程度)。

【最重要・鑑別ポイント】
赤血球の「形」が、出血部位を教えてくれます。

  • 均一性赤血球(非糸球体性赤血球):形が整った、血液中で見るのと同じ形の赤血球。→ 尿路(膀胱、尿管など)からの出血を示唆します。
  • 変形赤血球(糸球体性赤血球):ドーナツ状や出芽状など、形が変形した赤血球。→ 腎臓の糸球体を通過する際に傷ついた証拠。糸球体腎炎を強く疑います。

11-2. 白血球

健常人でも見られますが(1視野に2〜3個程度)、多数出現する場合は膿尿と呼ばれ、尿路感染症(膀胱炎、腎盂腎炎など)を強く疑います。ほとんどが好中球です。

【国試ポイント】低張尿では膨化し、高張尿では萎縮します。また、Glitter cell(グリッター細胞)は、低張尿中でブラウン運動により顆粒がキラキラ輝いて見える好中球のことで、特に腎盂腎炎でみられます。

12. 尿沈渣の登場人物たち②【上皮細胞と円柱】

12-1. 上皮細胞

尿路のどこから剥がれてきたかで、種類と臨床的意義が変わります。

  • 扁平上皮細胞:尿道や外陰部由来。健常人でもよく見られ、臨床的意義は低いことが多いです。
  • 移行上皮細胞:腎盂、尿管、膀胱由来。
  • 尿細管上皮細胞:腎臓の尿細管由来。これが多数出現する場合、尿細管の障害を示唆する重要な所見です。
  • 卵円形脂肪体:尿細管上皮細胞に脂肪が変性・沈着したもの。ネフローゼ症候群で特徴的に見られ、偏光顕微鏡で Maltese cross(マルタ十字)が観察されます。

12-2. 円柱

【これは何?】尿細管の中で、Tamm-Horsfallムコ蛋白を基質として作られる、尿細管の「鋳型」です。円柱の存在は、その異常が腎臓由来であることの強力な証拠になります。

円柱の種類 中に含まれるもの 主な関連疾患
硝子円柱 T-Hムコ蛋白のみ 健常人でもみられる
赤血球円柱 赤血球 糸球体腎炎など
白血球円柱 白血球 腎盂腎炎など
上皮円柱 尿細管上皮細胞 尿細管壊死など腎実質障害
顆粒円柱 変性した細胞成分 各種腎疾患
ろう様円柱 さらに変性が進んだもの 慢性腎不全など重篤な腎障害
脂肪円柱 脂肪滴、卵円形脂肪体 ネフローゼ症候群

13. 尿沈渣の登場人物たち③【結晶・その他】

13-1. 結晶

尿のpHや成分によって、様々な結晶が析出します。

  • 酸性尿でみられる主な結晶:
    • シュウ酸カルシウム:封筒状、ダンベル状。健常人でもみられる。
    • 尿酸:六角板状、樽状など多彩。高尿酸血症(痛風)と関連。
    • シスチン:無色六角板状。シスチン尿症という先天性代謝異常を示唆する、極めて重要な所見。
    • チロシン:針状結晶。重篤な肝障害を示唆。
    • ビリルビン:黄褐色の針状・顆粒状。閉塞性黄疸など。
  • アルカリ性尿でみられる主な結晶:
    • リン酸アンモニウムマグネシウム(ストラバイト):棺のフタ状。尿路感染症と関連。
    • リン酸カルシウム:無定形、プリズム状。
    • 炭酸カルシウム:球状、ダンベル状。

13-2. 微生物・その他

  • 細菌・酵母:多数見られれば尿路感染症を疑います。酵母は出芽している像が特徴です。
  • トリコモナス:鞭毛を持って運動する原虫。性感染症であるトリコモナス腟炎の原因となります。

【総まとめ】尿検査で得られる情報の統合的解釈

ここまで、3つのパートにわたって尿検査の全知識を学んできました。最後に、各検査項目がどのように連携し、一つの診断に繋がっていくのかを再整理しましょう。

Part.1:物理的性状の評価

尿量、色調、混濁、pH、比重の観察は、腎臓の濃縮・希釈能力や、体内の水分バランス、異常代謝物の存在を示唆する、スクリーニングの第一歩です。

Part.2:化学的成分の分析【定性検査】

試験紙法による蛋白、糖、ケトン体、ビリルビン、ウロビリノゲン等の測定は、腎疾患や糖尿病、肝・胆道系疾患といった、より具体的な病態を推定するための重要な化学的根拠となります。

Part.3:有形成分の同定【沈渣検査】

顕微鏡下での赤血球、白血球、上皮細胞、円柱、結晶などの観察は、病変の部位(糸球体か、尿細管か、尿路か)や、原因(炎症、結石、感染など)を特定するための、確定的な情報を提供します。

さい
さい
尿検査は、これら「性状」「定性」「沈渣」という3つの異なる角度からの情報を、パズルのように組み合わせることで、初めて正確な臨床的価値が生まれます。

この3部作で学んだ知識は、あなたの臨床検査技師としてのキャリアにおける、揺るぎない土台となるはずです。国試の得点源になることはもちろん、臨床現場に出てからも、あなたの大きな武器にもなるはず!

あなたの努力が、最高の結果に結びつくことを心から応援しています!