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【心電図・完全版】国試7年分の過去問16問を分析!波形が読めない人のための最強攻略ガイド
心電図って…
正直、何から見ればいいか分からない!
- ✔P波、QRS波、T波…それぞれの意味が曖昧…。
- ✔不整脈の波形が、全部同じに見えてパニックになる!
- ✔STが上がってる?下がってる?どこを見ればいいの…?
しかし、ご安心ください。過去7年分の国家試験を徹底分析した結果、心電図問題には明確な「出題パターン」と「見るべきポイント」が存在することがわかりました。
この記事は、単なる暗記リストではありません。複雑な心電図を「物語」として読み解くための思考法をゼロから解説し、あなたがどんな波形を見ても動じない、本物の読影力を身につけるための究極のガイドブックです。
【データ分析】国試における心電図の重要性
過去7年間(第65回〜第71回)の国家試験で、純粋な「心電図」に関連する問題は、合計16問出題されています。これは、毎年平均して2〜3問が心電図から出題される計算です。合否を分けるこの数点を、確実に得点源にしましょう。
▼ クリックして出題ソース(全16問)を見る
第71回: AM-16, AM-17, PM-18
第70回: AM-17, AM-18, PM-18
第69回: AM-17, PM-16
第68回: AM-16, PM-17
第67回: AM-16, AM-17, AM-18, PM-16
第66回: PM-17, PM-18
第65回: AM-17
Part 1:【超・基礎】心電図を読み解くための3つの神器
難しい波形を見る前に、まずは基本となる3つの知識(神器)を完璧にしましょう。
神器①:P-QRS-T波の意味と正常値
心電図は、心臓の電気的な興奮の物語です。
- P波:心房の興奮(脱分極)。(正常:高さ<0.25mV, 幅<0.11秒)
- QRS波:心室の興奮(脱分極)。(正常:幅<0.10秒)
- T波:心室の興奮からの回復(再分極)。
- PQ時間(PR時間):心房→心室の伝導時間。(正常:0.12〜0.20秒)
神器②:12誘導の役割(心臓の壁を見る)
壁の場所 | 対応する誘導 |
---|---|
前壁・中隔 | V1, V2, V3, V4 |
側壁 | Ⅰ, aVL, V5, V6 |
下壁 | Ⅱ, Ⅲ, aVF |
神器③:電極の正しい位置
胸部誘導の電極位置は、働き出してからも絶対に知っておかなければならない必須知識です。(名前を覚える必要があるかは疑問ですが笑)
- V1:第4肋間胸骨右縁
- V2:第4肋間胸骨左縁
- V4:第5肋間と左鎖骨中線の交点
- V3:V2とV4の中間
- V5:V4と同じ高さで、左前腋窩線上
- V6:V4と同じ高さで、左中腋窩線上
Part 2:【さい流・読影術】どんな波形も5ステップで必ず読める!
国試の画像問題が出たら、焦らずこの5ステップで波形を見ていきましょう。
- Step1:リズムは整か?(R-R間隔)
→R波の間隔が一定なら「整」、バラバラなら「不整」。R-R間隔の不整は、心房細動を強く疑うきっかけになります。 - Step2:P波はあるか?QRS波と連動しているか?
→P波が見当たらなかったり、P波とQRS波がバラバラに動いていたりしたら、房室ブロックを疑います。PQ時間の延長もここでチェック! - Step3:QRS波の幅は広いか?狭いか?
→QRS幅が3マス(0.12秒)以上なら「幅が広い(wide QRS)」。これは、興奮が心室内の特殊心筋(刺激伝導系)を正常に通っていないサインであり、脚ブロックや心室性不整脈を考える重要な所見です。 - Step4:STは上がってる?下がってる?
→基線(PQ部分)からST部分が上がっていれば「ST上昇」、下がっていれば「ST低下」。これは心筋の虚血(酸欠状態)を示唆し、心筋梗塞や狭心症を鑑別する上で最も重要な所見の一つです。 - Step5:神器②の出番!どの誘導で変化が起きているか?
→ST変化や異常Q波が起きている誘導から、心臓のどの壁に異常があるのか(前壁?下壁?)を特定します。
Part 3:【過去問演習】7年分の全16問を徹底解説!
ここからは、実際に過去問を解きながら、知識を定着させていきましょう。
【第71回 午前 問16】
問題:標準 12 誘導心電図で V4 誘導の電極位置はどれか。
- 第 4 肋間胸骨右縁
- 第 4 肋間胸骨左縁
- 第 5 肋間と左鎖骨中線の交点
- 第 5 肋間と左前腋窩線の交点
- 第 5 肋間と左中腋窩線の交点
【解答】3
【さい流・ポイント解説】
これは絶対に落とせない超・頻出の知識問題です。「神器③」で解説した通り、V4の電極位置は「第5肋間と左鎖骨中線の交点」です。他の選択肢がどの電極位置を指すかもしっかり復習しておきましょう!
文字で書くと難しいですね。「第5肋間と左鎖骨中線の交差点」が答えとなります。
【第71回 午前 問17】
問題:標準 12 誘導心電図(別冊No. 2)を別に示す。所見はどれか。
- 心房細動
- 心房粗動
- 上室頻拍
- 心室細動
- 心室頻拍

心電図を見てみると、「p波がわからない」ことがわかると思います。ここでp波がわからない=心房細動!と答えたくなるところですが、よく似た不整脈には「心房粗動」があります。まずは、そこをまとめていきましょう。
【国試頻出】心房粗動 vs 心房細動 鑑別対決!
心房粗動 (AFL)
心房が高速で規則正しく空回り!
- 基線:のこぎり歯状のF波(粗動波)。規則的なギザギザ。
- RR間隔:規則的(2:1や4:1伝導のため)。
心房細動 (Af)
心房が無秩序に痙攣!
- 基線:不規則に揺れるf波(細動波)。細かい震え。
- RR間隔:完全に不規則(絶対性不整)。
【ポイント】
波形を見たら、まずRR間隔をチェック!
「RR間隔が整なら粗動」「RR間隔が不整なら細動」と判断するのが、最も早く確実な見分け方です。
鋸歯状のF波が見られているので4:1の心房粗動だということがわかります。伝導までは聞かれていませんが、答えは「心房粗動」になります。
【第71回 午後 問18】
問題:肢誘導心電図(別冊No. 3)を別に示す。所見はどれか。
- 洞房ブロック
- Ⅰ度房室ブロック
- Wenckebach 型Ⅱ度房室ブロック
- MobitzⅡ型Ⅱ度房室ブロック
- Ⅲ度房室ブロック

房室ブロック(AVブロック)の要点まとめ
【房室ブロックとは?】
✅ Ⅰ度房室ブロック
【所見】PQ時間(PR時間)が、基準値(0.20秒)を超えて延長しているだけ。QRS波が抜けることはありません。
大きい1マスが目安になります(0.20秒)
【危険度】低い(健康な人にも見られる)
✅ Ⅱ度房室ブロック (ウェンケバッハ型 / MobitzⅠ型)
【所見】PQ時間が、だんだん長くなっていき、ついにP波の後のQRS波が1回、ポンと抜けます(脱落)。
そして、また短いPQ時間から繰り返します。
【危険度】低い
🚨 Ⅱ度房室ブロック (モビッツⅡ型 / MobitzⅡ型)
【所見】PQ時間は一定で正常範囲内なのに、突然、前触れなくQRS波が抜けます。
【危険度】高い(突然死のリスクあり)
🚨 高度房室ブロック
【所見】P波の後のQRS波が、2回に1回、あるいは3回に1回など、規則的に抜け続ける状態。(2:1、3:1ブロックなど)
【危険度】高い
🚨 Ⅲ度房室ブロック(完全房室ブロック)
【所見】心房と心室の電気的な連絡が完全に途絶。P波とQRS波が、お互いを無視して、全く無関係にバラバラのリズムで出現します。(P-P間隔は一定、QRS-QRS間隔も一定だが、両者に全く関連がない)
【危険度】非常に高い
【参考】房室ブロック分類まとめ表
分類 | PQ時間 | QRS波の脱落 | 危険度 |
---|---|---|---|
Ⅰ度 | 延長 (0.21秒以上) | なし | 低い |
Ⅱ度 (ウェンケバッハ) | 徐々に延長 | 延長後に1回脱落 | 低い |
Ⅱ度 (モビッツⅡ) | 一定 | 突然脱落 | 高い |
高度 | 一定 | 2:1, 3:1などで規則的に脱落 | 高い |
Ⅲ度 (完全) | PとQRSが無関係 | P波と無関係に出現 | 高い |
この心電図はp波とQRS波の間隔が大きい1マス以上空いており、QRS波の脱落を確認できないため「1度房室ブロック」が答えとなります。
【第70回 午前 問17】
問題:標準 12 誘導心電図(別冊No. 2)を別に示す。所見はどれか。
- 右脚ブロック
- 左脚ブロック
- Ⅲ度房室ブロック
- MobitzⅡ型房室ブロック
- Wenckebach 型房室ブロック

房室ブロックについての問題です。
先ほどの解説を参考に考えてみましょう。
▼▼わからない人のために▼▼
もう少し掘り下げていかにまとめました。参考にしてください。
【国試で差がつく】ウェンケバッハ型と完全房室ブロックの見分け方
この2つには、決定的な違いがあります。
Ⅱ度 ウェンケバッハ型
P波とQRS波は
「腐れ縁」の関係!
- PQ時間がだんだん延びていく。
- ついにQRSが1回脱落する(見捨てられる)。
- でも、また次のP波からはQRSがついてくる(関係修復)。
Ⅲ度 完全房室ブロック
P波とQRS波は
「完全に他人」!
- P波はP波で、一定のリズムを刻む。
- QRS波はQRS波で、P波とは無関係に、一定の補充収縮リズムを刻む。
- お互いを完全に無視している。
- 結果として、高度な徐脈になる。
ポイントは、「QRSが抜ける前に、PQ時間が延長していく過程があるか?」です!
今回は徐々に延びていき、QRS波が脱落しているので、Wenckebach 型房室ブロックが答えとなります。
【第70回 午前 問18】
問題:ホルター心電図の誘導部位(別冊No. 3)を別に示す。NASA 誘導の陽極はどれか。
- ①
- ②
- ③
- ④
- ⑤

【ホルター心電図】NASA誘導とCM5誘導の使い分け
🚀 NASA誘導
P波が大きく見える!
=不整脈の解析に強い
- P波が明瞭に記録できる。
- 上室性期外収縮や房室ブロックなど、P波の判読が重要な不整脈の診断に非常に有利。
❤️ CM5誘導
V5誘導に類似!
=虚血性心疾患に強い
- 波形が標準12誘導のV5誘導に近い。
- ST-T変化の確認がしやすく、狭心症などの虚血性心疾患の検出に非常に有利。
今回は、電極の取り付け位置だけですので、④が答えとなります。
【第70回 午後 問16】
問題:標準 12 誘導心電図を別に示す。考えられるのはどれか。
- 高 K 血症
- 高 Ca 血症
- 高 Na 血症
- 低 K 血症
- 低 Ca 血症

【国試頻出】電解質異常による心電図変化
① 高カリウム血症 (K↑)
【最重要所見】
テント状T波が出現します!
- T波が尖る (テント状T波): 最も早期に出現する特徴的な変化。基部が狭く、左右対称に尖ります。
- 進行すると…: P波の消失、QRS幅の増大(サインカーブ状)、そして最終的には心室細動や心停止に至る、非常に危険な状態です。
② 低カリウム血症 (K↓)
【最重要所見】
巨大なU波が出現します!
- U波の増高: 平たくなったT波の後に、目立つU波が出現するのが最大の特徴です。
- ST低下、T波の平低化: T波が平たくなり、ST部分が低下します。
- QT(QU)間隔の延長: T波とU波が融合して、QT時間が延長しているように見えます。
③ 高カルシウム血症 (Ca↑)
【最重要所見】
QT間隔が短縮します!
- QT間隔の短縮: ST部分が短縮〜消失し、QRS波の直後にT波が続くように見えます。
④ 低カルシウム血症 (Ca↓)
【最重要所見】
QT間隔が延長します!
- QT間隔の延長: 高カルシウム血症とは逆に、ST部分が延長することでQT間隔が長くなります。(T波自体の幅は変わりません)
【さい流・暗記法】
「カリウム(K)はT波、カルシウム(Ca)はQT」と覚えよう!
心電図を見ると、T波の後に続く巨大なU波がみられます。
すなわち、「低カリウム血症」が答えになります。
【第69回 午前 問17】
問題:四肢誘導心電図(別冊No. 3)を別に示す。正しいのはどれか。
- 右脚ブロック
- 房室ブロック
- WPW 症候群
- ペーシングリズム
- 不随意運動によるアーチファクト

【国試頻出】不随意運動によるアーチファクト(筋電図の混入)
主な原因は「寒さ」と「緊張」
患者さんの体が、無意識に震えてしまうことが主な原因です。
- 寒冷による震え: 検査室の室温が低すぎると、患者さんは寒さを感じ、体を温めようとして筋肉が細かく震えます。
- 緊張や不安による力み: 患者さんが緊張して体に力が入っていると、その筋活動がノイズとして記録されてしまいます。
対策と推奨される検査室環境
原因が分かれば、対策はシンプルです。「患者さんにリラックスしてもらえる快適な環境」を作ることが最も重要になります。
【推奨される検査室環境】
- 室温:17〜28℃の範囲に保つ。
(特に冬期は20〜22℃が望ましい) - 湿度:40〜70%の範囲に保つ。
- その他:
- 空調の風が患者さんに直接当たらないように配慮する。
- 患者さんに優しく声をかけ、リラックスを促す。
- 必要であれば、毛布などで保温する。
【国試ポイント】
不随意運動によるアーチファクトは、患者さん側の要因で発生します。基線がギザギザしていたら、まずは「室温は適切か?」「患者さんはリラックスできているか?」を考えるようにしましょう。
【第69回 午後 問17】❌
問題:心電図(別冊No. 2)を別に示す。正しいのはどれか。
- 右脚ブロック
- 左脚ブロック
- 前壁中隔梗塞
- 房室ブロック
- 心室性期外収縮

脚ブロックの鑑別問題です。
【国試頻出】脚ブロック(RBBB / LBBB)の鑑別
【共通所見】
まず、どちらの脚ブロックにも共通する所見はこれです。
QRS幅の延長(≧ 0.12秒 / 3マス以上)
高速道路が使えず、一般道(心室筋)を電気がゆっくり伝わるため、興奮に時間がかかりQRSの幅が広くなります。
右脚ブロック (RBBB)
V1誘導で
「M字型 (rsR’パターン)」
- V1誘導:ウサギの耳のような特徴的なM字型(rsR’)波形。
- Ⅰ, V5, V6誘導:幅の広いS波。
- 臨床的意義:比較的、問題ないことが多い。
左脚ブロック (LBBB)
Ⅰ, V6誘導で
「幅広い notched R」
- Ⅰ, aVL, V5, V6誘導:Q波がなく、幅広く切れ込み(notch)のあるR波。
- V1誘導:幅広く深いS波(QSまたはrSパターン)。
- 臨床的意義:重篤な心疾患を背景に持つことが多く、予後不良の場合がある。
【国試ポイント】
「V1でM字型なら右脚ブロック」と、まずは特徴的な波形を覚えましょう!
そして、左脚ブロックの方が、臨床的に危険度が高いということも重要です。
形で覚えてしまうのが一番楽です。「左脚ブロック」が答えとなります。
【第68回 午前 問16】
問題:心電図(別冊No. 3)を別に示す。正しいのはどれか。
- 下壁梗塞
- 側壁梗塞
- 前壁中隔梗塞
- Brugada 症候群
- 四肢電極の付け間違い

【国試頻出】虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)の心電図
狭心症と心筋梗塞の「決定的な違い」
どちらも冠動脈の血流障害が原因ですが、心筋の状態が全く異なります。
狭心症
心筋は「一時的に酸欠」なだけ
血流が回復すれば、心筋は元に戻る(可逆的)。
心筋梗塞
心筋が「壊死」してしまった状態
壊死した心筋は元に戻らない(不可逆的)。
心電図所見の違い【ST変化がカギ!】
この「可逆的か、不可逆的か」の違いが、心電図所見に現れます。
- 狭心症(労作性):運動時など、心臓が頑張る時にだけ一時的な虚血が起こる。
→ ST低下が基本。発作が治まれば正常に戻る。 - 心筋梗塞(ST上昇型):冠動脈が完全に閉塞し、心筋が全層性に壊死する。
→ ST上昇と異常Q波が出現。 - 異型狭心症:冠動脈の痙攣(攣縮)で一時的に完全閉塞する。
→ 発作時にST上昇が見られるが、心筋梗塞と違い、発作が治まれば元に戻り、異常Q波は残らないのが原則。
【国試ポイント】心筋梗塞の部位診断
どの誘導でST上昇や異常Q波が見られるかで、どの冠動脈が詰まり、心臓のどの壁が壊死したかを推定できます。
梗塞部位 | ST上昇が見られる誘導 | 責任冠動脈(主なもの) |
---|---|---|
前壁中隔 | V1, V2, V3, V4 | 左前下行枝 |
側壁 | Ⅰ, aVL, V5, V6 | 左回旋枝 |
下壁 | Ⅱ, Ⅲ, aVF | 右冠動脈 |
心電図では、Ⅱ, Ⅲ, aVFにてST上昇が見られるため、「下壁梗塞」が答えとなります。
【第68回 午後 問17】
問題:四肢誘導心電図(別冊No. 3)を別に示す。正しいのはどれか。
- 右脚ブロック
- 房室ブロック
- WPW 症候群
- ペーシングリズム
- 不随意運動によるアーチファクト

【国試頻出】ペースメーカー心電図の基本モード
ペースメーカーには様々なモードがありますが、国試レベルでは、まず基本となる3つのモードの「何をしているか」を理解するのが最も効率的です。
① VVI モード
心室を見張り、サボったら叩く!
- 心室(V)の動きを監視(センス)しています。
- 自己の心拍が設定された時間内に出なければ、心室(V)を電気刺激(ペーシング)します。
- 自己の心拍が出れば、ペーシングを抑制(I)します。
- 【波形の特徴】
スパイク波の後に、幅の広いQRS波が続きます。P波とは無関係に動きます。
② VDD モード
心房の動きに合わせて、心室を叩く!
- 心房(A)の動き(P波)を監視しています。
- P波が出た後、適切なタイミング(AVディレイ)で心室(V)をペーシングします。
- 心房と心室の生理的な連動を保ちます。
- 【波形の特徴】
自己のP波の後に、一定の間隔をあけてスパイク+幅広QRS波が出現します。
③ DDD モード
心房も心室も見張り、両方叩ける万能型!
- VDDモードの機能に加え、心房(A)もペーシングできます。
- 洞不全などで自己のP波が出ない時でも、心房を刺激して心臓全体のリズムを作れます。
- 【波形の特徴】
・P波の前に心房スパイク
・QRS波の前に心室スパイク
の両方が見られることがあります。
国家試験でDDDやらVDDなどを見極める問題は今のところ見たことはないのですが、もしかしたら今後出てくるかもしれないので一応触りの部分を書いておきました。(ペースメーカーは難しすぎて正直僕はかなり苦手です)
心電図を見ると、p波の前にスパイク波が見られるので、DDDモードでペーシングされていることがわかります。「ペーシングリズム」が答えになります。
【第67回 午前 問16】
問題:成人の心電図で異常値はどれか。
- P 波幅 0.10 秒
- PR 時間 0.18 秒
- QRS 幅 0.20 秒
- QTc 0.40 秒
- 電気軸 60 度
【解答】3
【さい流・ポイント解説】
心電図の正常値を覚えているかを問う超・基本問題です。「神器①」で解説した通り、QRS幅の正常値は 0.10秒未満(2.5マス未満)です。0.20秒は明らかに異常であり、脚ブロックなど心室内での伝導障害を強く示唆します。他の選択肢はすべて正常範囲内です。
【第67回 午前 問17】
問題:心電図(別冊No. 2)を別に示す。正しいのはどれか。
- 右胸心
- 右軸偏位
- 側壁梗塞
- 胸部電極の付け間違い
- 四肢電極の付け間違い

さて、心電図を見ると、これといって特に以上はなさそうです。しかしよく見ると、通常陽性に波形が出ないといけない箇所が陰性化しており、逆に陰性化しなければいけない箇所が陽性化しています。
【国試の罠】四肢誘導(左右)の付け間違いを見抜く!
右手(赤)と左手(黄)を間違えた時の「4つの鉄則」
この4つが見られたら、まず付け間違いを疑え!
- Ⅰ誘導のP波が陰性化する
→ これが最も重要な所見です。Ⅰ誘導は心臓を左側から見ているため、正常ならP波は必ず陽性になります。ここが陰性なら、まず異常を疑います。 - 右軸偏位になる
→ Ⅰ誘導が陰性、aVF誘導が陽性となり、電気軸が右側に傾きます。 - aVR誘導が陽性化する
→ 通常、電気信号はaVR電極から遠ざかるため陰性になりますが、付け間違いにより陽性になります。 - 胸部誘導(V1〜V6)は変化しない
→ 付け間違いは四肢電極だけなので、胸部誘導は正常な波形を示します。
【国試で差がつく鑑別診断】
「Ⅰ誘導の陰性P波」は滅多に起こりませんが、付け間違い以外では、以下の2つの稀な病態が鑑別に挙がります。
- 右胸心: 心臓が右側にある状態。この場合、胸部誘導のR波がV1からV6にかけて徐々に低くなるという特徴があります。
- 左房調律: 洞結節ではなく、左心房から興奮が始まっている状態。
答えは、p波が陰性、aVRが陽性なので、「四肢電極のつけ間違い」になります。
【第67回 午前 問18】
問題:トレッドミル負荷試験について正しいのはどれか。 2 つ選べ。
- 不安定狭心症は禁忌である。
- 目標心拍数は体重で決める。
- 誘導方法は CM5 誘導を用いる。
- 運動誘発性不整脈の診断に用いられる。
- Bruce 法では 3 分ごとに負荷量を増大させる。
【解答】1, 4
【さい流・ポイント解説】
負荷心電図の重要ポイントが詰まった良問です。
1. 不安定狭心症は絶対禁忌です。いつ心筋梗塞を起こすか分からない状態の患者に運動をさせるのは危険すぎます。
4. 運動誘発性不整脈の診断にも有用です。虚血性変化(ST低下)だけでなく、運動時にのみ出現する不整脈を捉えるのも重要な目的です。
(※注:5もBruce法の定義としては正しいですが、国試では目的や禁忌の方が優先度が高いことが多いです。2の目標心拍数は年齢から計算します)
【第67回 午後 問16】
問題:心電図(別冊No. 2)を別に示す。正しいのはどれか。
- 右脚ブロック
- 左脚ブロック
- 急性前壁中隔梗塞
- A 型 WPW 症候群
- B 型 WPW 症候群

【国試頻出】WPW症候群
【病態】なぜ特徴的な波形になるのか?
WPW症候群の本質は、心房と心室の間に「副伝導路(ケント束)」という、正規ルートとは別の“裏道(バイパス)”が存在することです。
- 正規ルート(房室結節)は、興奮をわざとゆっくり伝えます。
- 裏道(ケント束)は、興奮を素通りさせてしまいます。
このため、心房の興奮の一部が裏道を通って、正規ルートよりもフライングして心室に到達。これが、特徴的な心電図変化を生み出します。
【心電図】覚えるべき3つの所見
- PQ時間の短縮(<0.12秒)
→ 裏道(ケント束)を通った興奮が、正規ルートより早く心室に到着するため。 - デルタ(Δ)波の出現
→ フライングした興奮が、高速道路(刺激伝導系)ではなく一般道(心室筋)をゆっくりと伝わり始めるため、QRS波の立ち上がりがなだらかになります。このなだらかな部分がデルタ波です。 - QRS幅の増大(≧0.12秒)
→ デルタ波の分だけ、QRS波の開始が早まるため、結果的に幅が広くなります。
【国試で差がつく知識】A型とB型の分類
裏道(ケント束)が心臓の左右どちらにあるかで、A型とB型に分類されます。
- A型:裏道が左心室側にある。V1誘導で、デルタ波もQRS波も上向き(陽性)。
- B型:裏道が右心室側にある。V1誘導で、デルタ波は陰性で、QRS波がrS型になる。
心電図を見て、Δ波がある!WPW症候群だ!とわかっても、そこからA型とB型の鑑別を要求する難問だと思います。上にあるようにQRS波で鑑別は可能なので、しっかり覚えてきましょう。
答えは「A型 WPW症候群」になります。
【第65回 午後 問18】
問題:ホルター心電図検査で正しいのはどれか。 2 つ選べ。
- 単極誘導が用いられる。
- ST 変化は検出できない。
- 記録中の行動記録は解析に必要である。
- NASA 誘導は P 波の検出に優れている。
- CM5 誘導の波形は胸部誘導の V1 に類似する。
【解答】3, 4
【さい流・ポイント解説】
ホルター心電図の本質を問う良問です。
3. 行動記録:「階段を上ったら動悸がした」などの行動記録と心電図の変化を照らし合わせることが、診断において極めて重要です。
4. NASA誘導:P波が大きく記録され、不整脈の解析に優れています。
【頻出の比較知識】NASA誘導はP波(不整脈)に、CM5誘導はST変化(虚血)の検出に優れています。この目的の違いは絶対に覚えましょう!
【第65回 午前 問17】
問題:心電図(別冊No. 2)を別に示す。正しいのはどれか。 2 つ選べ。
- 洞停止
- 心室頻拍
- 心房細動
- 洞不整脈
- 完全右脚ブロック

ここまでの解説を読んでいたら、理解できる問題かと思います。
- p波はありますか?
- QRS波の幅は?
- QRS波の形は?
【国試頻出パターン】心房細動 + 完全右脚ブロック
この心電図は、国試で頻出の2つの病態が合併しています。それぞれの特徴を分けて見ていきましょう。
① 心房細動 (Af) の所見
リズムがバラバラ!
- P波の消失:正常な心房の興奮がありません。
- R-R間隔の不整:心室への興奮伝達が不規則になります。
- 基線の揺れ (f波):心房の細かい震えが記録されます。
② 完全右脚ブロック (cRBBB) の所見
QRS波の形がおかしい!
- QRS幅の延長 (≧0.12秒):右脚を通れず、電気が遠回りするため。
- V1, V2誘導のrsR’パターン:特徴的な「ウサギの耳」のようなM字型波形。
- Ⅰ, V5, V6誘導の幅広いS波:最後に興奮する右心室からの電気が、これらの誘導から遠ざかるため。
【国試ポイント】
この2つが合併すると、心電図は「リズムはバラバラで、かつQRSの形がおかしい(幅が広いM字型)」という特徴的な波形になります。5ステップ読影術の「Step1: リズム」と「Step3: QRS幅」で、両方の異常に気づくことが重要です。
2つの所見がある心電図ですが、それぞれ典型的な波形が見られるので、さほど難しくはないと思います。
答えは、「心房細動」と「完全右脚ブロック」です。
まとめ:心電図は「ルール」で解くパズルだ!
心電図は、一見すると複雑な暗号のようです。しかし、この記事で解説した「ルール」さえ身につければ、それは必ず解ける論理的なパズルに変わります。
- 3つの神器(PQRST, 12誘導, 電極位置)を完璧にする。
- どんな問題も、焦らず「さい流・5ステップ読影術」で体系的に解く。
- 過去問演習を繰り返し、実践的な読影力を身につける。
この3つを実践すれば、心電図はあなたの「最強の得点源」になります。自信を持って、国試に臨んでください!